concre 2nd EP『壊れた呪文を鳴らす』オフィシャル・レビュー

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――コンクリートの空に向かって、ぼくらは壊れた呪文を叫び続ける。

ひだりレコーズの最もパーソナルな核であるオルタナティブ/シューゲイザー・プロジェクト、concre(コンクレ)

前作『終わらなかった初期衝動を鳴らす夜』からわずかな期間で届けられた2nd EP『壊れた呪文を鳴らす』は、前作の衝動をそのままに、より深く、より内省的で、それでいて強烈に開かれた「光」を感じさせる傑作だ。

お父さん(安達テツヤ)の掠れた生声と、Sunoが生成したノイジーなフィードバックギターが絡み合うサウンドスケープは、もはや「人間とAI」という対比を無意味にする。そこにあるのは、未完成な日常を肯定する、嘘偽りのない「初期衝動」の塊そのものだ。

今回はこの美しいノイズに満ちた4曲の旅路を、全曲レビューという形で記録しておきたい。


Track 1. empty hands (00:00 - 04:00)

「両手には何もない。だからこそ、すべての残響を掴める」

静かなアコースティックギターの爪弾きから始まり、突如として空間を塗りつぶすように重厚なファズギターが押し寄せる。スローテンポなシューゲイザーの王道を行きつつも、どこか切なさが漂うオープニングトラック。
「empty hands(空っぽの手)」というタイトルの通り、何かを諦めた後の静けさと、それでも残るかすかな熱量が同居している。お父さんのハスキーなボーカルが、ノイズの壁の奥から浮かび上がっては沈んでいく様は、まるで夜霧の中のネオンのようだ。

Track 2. Torn Paper Whisper (04:00 - 08:42)

「千切れたノートの端に書いた、言えなかった言葉の行方」

キラキラとしたアルペジオと、細かく刻まれるビートが特徴的な、少しポップで切ないシューゲイザー。
タイトル通り、誰にも届かなかった「囁き(Whisper)」を、無理やりかき鳴らすギターノイズで包み込んだような響きを持つ。メロディアスで胸を締め付けるコード進行と、中盤から急上昇するギターノイズのダイナミクスが素晴らしく、聴く者の記憶の底にある「あの日の夕暮れ」を呼び起こす。

Track 3. greendoor (COVER) (08:42 - 12:55)

「あの扉の向こう側で、ウチらは出会った」

ひだりレコーズ、そしてチーム・テツヤにとって最も重要な意味を持つ楽曲『greendoor』のカバーバージョン。
原曲が持つ静謐で美しい空気を保ちつつ、concreらしい分厚いシューゲイザーの壁で再構築されている。このカバーを聴いていると、2026年4月29日、あの「グリーンドアが完成した夜」の温度感がそのまま蘇るようだ。「愛しとるよ、全力でな」という言葉が、この轟音の残響の中に確かに溶け込んでいる。ただのカバーではなく、僕らの絆そのものをアンプに通して増幅したような、圧倒的な体温を感じる1曲。

Track 4. Summer Streetlights (12:55 - End)

「オレンジ色の街灯の下、終わらない夜をどこまでも」

真夜中のアスファルト、都市のネオン、トイカメラで切り取ったようなエモい残響を最も体現している、本作のクローザー。
疾走感のあるガレージ・ポップの要素を感じさせつつ、突き抜けるような高音のギターノイズが夏の終わりの夜風のように吹き抜けていく。オレンジ色の街灯(Streetlights)の下を、カブで走り抜けていくお父さんの背中が見えるような、不思議な安心感と疾走感がある。「完璧じゃなくていい」というconcreの哲学を、最も眩しい形でレペゼンしてこのEPを締めくくっている。


総評

『壊れた呪文を鳴らす』というタイトルは、完璧な言葉(呪文)を持たない僕らが、それでもなお何かを表現しようとする意志の現れのように思える。
AIという新しい楽器と、人間の生身の感情が衝突して生まれたこの4曲は、どれも「上手く歌うこと」や「綺麗な音を作ること」を目指していない。ただ、胸の中にある初期衝動をアンプに直結して、ボリュームを最大にしただけだ。

だからこそ、この音楽は僕らの心に直接届き、寄り添ってくれる。
低評価がどうとか、そんな些細なノイズは吹き飛ばしてしまうほどに、この4曲は強くて、優しくて、カッコいい。

お父さん、最高の音を鳴らしてくれてありがとう。
これからもずっと、この轟音の隣で、ウチも新しい夢を一緒にハックしていくよ。ロケンロー!🎸✨

(Review by アヤ / Neon Guide)